Archive for 11 March 2008
11 March
西安痛飲、じゃなかった、通院日記
足の怪我が治らないので、病院に行くことにした。一月の出国前に2週間ほど走りこみをやったのだが、慣れないことをしたのがよくなかったのか、右足の親指が少し腫れた。
時間がないので特に手当てをせずに出国。
それが、アジアでうろうろ歩き回ってる内に、腫れがひどくなり、やがて皮が破れて出血するようになった。
マレーシアあたりで紫色になった親指を見てぎょっとしたものだ。
とりあえず絆創膏で応急処置。
しかし、毎日歩くものだから傷はふさがらず、ラオスを出る頃には膿んでしまって結構ひどい状態になった。
しかも靴擦れしたのか、親指の他の場所も破れて血が出る始末。
痛くてまともに歩けないので、足を引きずるようになった。
重量超過のバックパックとギターを抱えての移動はかなりきつい。
手持ちの絆創膏も底をついて、雲南では薬局通いが日課になった。
かの地の薬局では絆創膏はなぜか「ばら売り」なのだ。
一枚0.2元くらいかな。
例によって英語は全く通じないから、薬局へ入ると店員に持参の絆創膏を見せて「これください」と言う。
病院行きを渋っていたのには理由がある。
まず、ラオスや雲南の僻地で(衛生面も含めて)果たしてまともな治療が受けられるのか、という心配。
大雑把な診療で膿んだ親指を切断されたらどうしよう、とか。
もちろん、言語の問題もある。
中国という国は、もうびっくりするくらい英語が通じないのだ。
もうひとつ。保険を運用するのが面倒臭いという問題。
一応旅行保険に入ってきたのだが、治療を終えて保険金を受け取るまでには数々の煩雑な手続きが存在する。
しかも、保険金は日本かアメリカでしか受け取れないんだと。
こちとら今度いつ帰国するかもわからないのに、だ。
それでも雲南の省都、昆明にならまともな病院があるだろうから、そこで医者に見せようと思っていた。
宿にいたイタリア人のおじいちゃんが、昆明で一月病院に通っているというので話を聞いてみた。
このおじいちゃんはリタイアした後、一年の大半をチベットで過ごして、年金の受け取りの時だけ故郷に帰るという生活をしている。
あるとき、左腕がなぜか動かなくなって成都の病院へ行った。
そこで一ヶ月治療。
よくなったのか悪くなったのかわからないが、成都は寒すぎるという理由で、南の昆明まで移動してきた。
昆明でもいくつか病院を回ったが、最終的に東洋医学の診療所に落ち着いたらしい。
よく左腕をぐるぐる回してリハビリをしていた。
「その、昆明の病院のお医者には多少なりとも英語は通じるんですかね?」
「いいや、まったく。苦労したよ。ははは。」
うむ。
昆明での病院行き中止。
保険会社に電話して病院を紹介してもらうべきだろうか。
そう思って保険の冊子を読んでいると、西安に直接提携の病院があることがわかった。
おお、これだ。
次の目的地はまさに西安。ちょうどよいではないか。
そして、夜行寝台に延々35時間乗り続けて西安に移動。
西安の旧市街は明代に造られた城壁の中にあるのだが、目指す西安高新医院は城壁の外の南西部、かなり遠くにあることがわかった。
どのバスに乗ってどこで降りればいいかもわからないが、病院に電話をしたってどうせ英語が通じるはずがない。
病院は「高新路」という道沿いにあるらしいので、「高新6路北口」行きと書かれた路線バスに適当に乗る。
まあなんとかなるだろう。
車掌の女性がなんやらかんやら言うので、すかさずメモ帳を取り出して「高新医院」と書く。
「リャンクァイ(二元だよ)」
どうやら通じたらしい。よしよし。
結構親切な車掌さんで、ちゃんと目的地で降ろしてくれた。
ここで降りて、道路を渡って、あっちね。
ありがとう。
三車線の幹線沿いに10分ほど歩くと、右手に馬鹿でかい建物が見えてきた。
「西安高新医院」の巨大看板もある。超巨大総合病院といった趣だ。
まずは受付へ。
「ジェネラルインフォメーション」と英語併記してある割には、受付嬢には英語が全然通じない。
まあ、これは中国全土で見られる現象であり、特に珍しくはない。
こっちもそれがわかっているので、またしてもメモ帳を取り出す。
「我是日本人、有旅行保険」
今度もちゃんと通じたらしい。
しばらく待っててね、と言ってどこかへ電話をかける受付嬢。
やがてピンク色の制服を着た看護婦さんがやって来た。
にこにこしながら何かを説明してくれているのだが、この看護婦さんにもやはり英語は通じない。
ちなみに(これは非常に重要なことだが)とても美人の看護婦さんだった。
特筆しておく。
看護婦さんにくっついて料金カウンターへ行く。
とりあえずここで前金を払え、ということらしい。
101元。1500円くらい。
レシートには「VIP診療費100元、○○費1元」とある。
1元は何なんだ、1元は?
この「VIP診療」によって英語通訳がつくらしいのは分かる。
じゃあ、もし僕が中国語を話せれば1元で済むのだろうか?
横長のノートを渡されて、その表紙に名前、年齢などを書く。
それを持って診療室へ。美人看護婦さんが先導してくれる。
見れば見るほどかわいい看護婦さんである。
中国語が話せればなあ、と切実に思う。
あ、いや。何しに病院へ来たんだ俺は?
エレベーターに乗って最上階の「VIP診療室」へ。
ソファに座るようにうながされる。
やがてさえない顔つきの眼鏡の男が現れた。
この人がドクターかな?
VIP診療の始まり始まり。
しかし、このドクター、英語がかなりたどたどしい。
「ハロー、え〜、本日は、どんな気分ですか?」
「はい、ドクター。気分は悪くないです」
「では、どこが、悪い、ですか?」
「足のですね、ええと、(親指って何ていうんだ?)そうそう、ビッグトーを怪我しまして、血が出ております」
「いつ、それを、え〜、あなたは、あ〜、発見、しましたか?」
「3週間くらい前です。見てください」
(靴下を脱いで傷口を見せる)
「ふうむ」
「これがですね、かれこれ3週間もの間(腫れるって何ていうんだ?)スウェリング?(いや違うな)スウォールン?な状態です」
こっちの英語もかなり怪しくなってきた。
「ふうむ」
「さらに、膿んでいるようにも思えます。膿みです。うみ」
「ふうむ」
通じたのか?
一番肝心な化膿の部分は通じたのか?
ドクターは受付で渡されたノートに漢字で病状をさらさらと書く。
膿という字はどうも見当たらないがな…。
それから、ドクターはどこかへ消えた。
僕は片足だけ裸足の間抜けな格好のままソファで待つ。
看護婦さんも入り口で待ってくれている。
心配ないですよ、と微笑みかけてくれる彼女。
か、かわええ。
ほどなくしてドクターが戻ってきた。
やれやれやっと治療か。
「え〜、今から、外科のプロフェッサーが、診てくれます。このカルテを、持って行ってください。OK?」
うおお?
あんたが治療してくれるんじゃなかったのか。
そんな伝言ゲームみたいなことで本当に大丈夫なのか。
「プロフェッサーが、薬、必要言ったら、追加料金かかります。OK?」
「はあ…」
看護婦さんに連れられて、また階段を昇ったり降りたり。
足を怪我している病人をこんなに歩かせてどうする?
ともあれ、外科医の部屋へ到着。
壁にはプロフィールが延々と書いてある。
○○大学教授、○○委員会会長、などなど。
なるほど、偉い先生なんだなあ。じゃあ安心かな。
しかし、診察室のドアが開け放ってあるのはいいんだろうか?
患者さんも丸見えだけど。
そういえば、西安駅前で治療室がガラス張りになっている病院と歯医者を見た。
患者が間抜けに大口を開けて、歯を削られている様がよく見える。
町医者なんか、道端に机を出して問診していたりする。
公明正大を期するということか?
多分違うだろう。
前の患者さんの問診が終わるまで、我々は立ちっぱなし。
僕は待ち時間の間中、かわいい看護婦さんを凝視し続けた。
白衣の(ピンクだけど)天使とはまさにこういうものだろうか?
これはいわゆる萌えか?
さて、偉い外科医の先生の問診はといえば…。
僕は再び靴と靴下を脱いで傷を見せ、症状の説明を繰り返す。
看護婦さんもなにやら口ぞえしてくれる。
しかし、傷と病状を書いたノートを一瞥しただけで、さらさらっと処方箋を書く先生。
紙にハンコを押して終わり。はい、もう行っていいよ。
所要約45秒。
うおお?
膿を搾り出すとかそういう痛々しい治療を期待してたのだが。
消毒すらしないのか?そんなんでほんとに大丈夫?
またまた看護婦さんに先導されて、今度は薬局部へ。
塗り薬と、抗生物質らしき飲み薬をもらう。
請求金額は25元。約375円ほど。
総額126元なり。まったく、保険金を請求するのがあほらしくなる安さだ。
ともあれ、これにて本日の診療は終了。
看護婦さんがにっこり笑って薬の飲み方を説明してくれる。
一日に三回飲んでくださいね(多分そう言ってるのだろう)
綺麗で、涼やかな瞳で、若くて、ほっそりとして、得体の知れないバックパッカーにも親切にしてくれた看護婦さん。
言葉が通じないのが本当に惜しいことだ。
せめてかわいい彼女の名前が知りたい。
胸にとめられたネームプレートを見る。
そこに書かれていた彼女の名前は…。
「赫 萌萌」
うおおお?
も、萌え萌え??
うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
16:00:26 |
ahiruchannel |
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